森見登美彦さんの「四畳半神話大系(よじょうはんしんわたいけい)」を読んだことはありますでしょうか。
京都に住む腐れ大学生の「私」が、入学時に選んだ道によってどんな大学生活になるかを物語として描いている作品です。
各章同じ場面から始まるのですが、章のはじめで選ぶ道が違うため、それぞれの章で別の物語が描かれていきます。
今回の記事は、その「四畳半神話大系」の15年ぶりの続編である「四畳半タイムマシンブルース」についてのレビュー記事です。
「四畳半神話大系」を読んでいないという方は、まずはそちらを読むことをおすすめします。
四畳半タイムマシンブルースを読んで 感想・レビュー
※「四畳半タイムマシンブルース」についてネタバレするような記述はしていませんが、未読の方、内容を知りたくないという方はご注意を!
上田誠さんが主催する劇団ヨーロッパ企画の「サマータイムマシン・ブルース」という作品があるのですが、この作品を前述した「四畳半神話大系」の登場人物で再現したのがこの「四畳半タイムマシンブルース」です。
あらすじは以下。
とある大学、「SF研究会」のだらしない部員達に起こるドミノ倒しコメディ。前日にクーラーのリモコンが壊れてしまい猛暑の中ぐったりしてる部員達の前に突然タイムマシンが出現する。昨日に戻り、クーラーのリモコンを取ってこようと思ったメンバー。しかし、タイムトラベルしたことが面白くなった面々は、過去の世界でふざけたことばかりする。そんな中、過去を変えると今が消えてしまう可能性がある事を知った。慌てた部員たちは自分たちの「今」を消さないために、大急ぎで以前に自分たちが過去でやらかした一連の行動が致命的なことにならないようにリカバリーしようと奮闘する。「昨日」と「今日」だけのタイムトラベル物語。
「四畳半タイムマシンブルース」では、森見作品ではおなじみの下鴨幽水荘がその舞台となります。
「私」が住む部屋にあるエアコンのリモコンに、こちらもおなじみ「小津」がコーラをこぼしてしまうことでリモコンが水没。
そこに突如タイムマシンが出現し、下鴨幽水荘の住人たちは、昨日に戻って壊れる前のエアコンのリモコンを持ってこようとします。
しかし、タイムマシンでタイムトラベルを繰り返すうちに、「過去を変えることで現在も変わり、矛盾が生じる」という重大な問題に気が付きます。
わたしは事の重大さに気が付き、「現在」との矛盾をリカバリーしようと動き出すのです。
くだらなくて笑える、森見ワールド全開の作品
感想としては、「とにかくくだらなくて面白い」につきます。
森見さんのファンならば言うまでもなく、そうでない人でもあまりのくだらなさに思わず吹き出してしまうことでしょう。
また、下鴨幽水荘の癖の強い住人たちは、本作でも健在です。
大学八回生の樋口師匠は相変わらず自由気ままな性格で、本作でもみんなが樋口師匠に振り回されっぱなし。
「私」が思いを寄せる明石さんも、心強くもありながら、どこか抜けているキャラクターが魅力的な住人です。
また、タイムマシンというSF感の強いストーリーと、「四畳半神話大系」というパラレルワールド的なストーリーという組み合わせが、かなり相性がよく、違和感なく物語にのめり込むことができました。
そこまで計算されてこの小説が完成したのでしょうか。
森見先生、上田誠さん、恐るべしです・・・。
兎にも角にも、森見登美彦さんのファンであれば間違いなくハマる作品。
森見登美彦さんの本をあまり知らないという方にとっても、新たな小説の楽しさが伝わる作品だと思います。
そして、物語の最後には、素敵な一行が待っています。
読後感も最高の「四畳半タイムマシンブルース」、おすすめの一冊です。
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